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ご挨拶

再生生物学研究室(小島伸彦研究室)は2013年4月より、理学部理学科(当時国際総合科学部生命環境コース)および大学院生命ナノシステム科学研究科生命環境システム科学専攻に新規に開設された研究室です。

横浜市立大学で再生医療研究を活性化させるというミッションのもと、研究室がスタートしました。「臓器設計技術」を開発するというテーマを掲げ、まずは小さくともリアルな構造を持つ臓器をつくる技術ついて研究開発を行ってきました。2016年からは、本物そっくりの臓器だけでなく、移植する際に都合のよい構造をもつ臓器や、創薬支援のために試験管内で役立つ構造をもつ臓器、すなわち本物そっくりではないが、再生医療や創薬に役立つ臓器という新たなコンセプトを掲げ、研究を発展させてまいりました。目的に特化した臓器構造として際たるものが、同年にアイデアを着想した「液体肝臓」です。

特に創薬支援を実現するミニチュア臓器は、ちょうど欧米でMicrophysiological System、すなわちMPSの開発が盛んになっていたこともあり、AMED-MPS事業(2017〜2021年度)に研究代表として採択される幸運に恵まれました。特に国内の製薬企業やライフサイエンスに興味をもつ企業とのネットワークが形成され、結果として横浜市立大学認定ベンチャーとしてエコセル株式会社を2022年7月に設立するに至りました。エコセル株式会社とは共同研究という形で密に連携をとっており、大学の研究室ではカバーできない活動を担っていくことになります。起業前に税金を原資として投入していただいた研究開発費分を、起業活動によって納税して還元することが目標の一つです。

液体肝臓とは、赤血球に肝臓に多く発現する代謝酵素を封入したもので、先天代謝異常の治療などに応用できる可能性があります。肝臓や肝細胞を移植するためには免疫抑制剤が必要となり、簡単に移植という治療法を選択できるわけではありません。生きるか死ぬかのシビアな疾患にしか適用されないのです。しかし、体質の改善といったマイルドな目的にも肝臓移植を適用できたほうがよい。マイルドといっても、例えばフェニルケトン尿症の患者さんは一生、お肉を食べることができません。液体肝臓のアプローチであれば、免疫抑制剤の投与なく、一時的に体質を改善できる可能性があります。まだまだ開発が軌道にのっているとはいえませんが、クラウドファンディングによって研究資金を集めるなど、可能な限り急いで開発したいと努力しています。

今後、我々の研究はどこに向かうのでしょうか?例えば作製する臓器のサイズアップに挑戦していきたいと思います。3Dプリンターによって大型臓器を一瞬のうちに作製するといったアプローチも存在しますが、我々は我々が得意とするミニチュア臓器を「育てる」ことで大型化するという方法論を検討しています。また、単一臓器や単一組織の再現だけでなく、システムとしての細胞集合体の形成にも取り組みたいと考えています。情報を取り入れて応答するといったものです。これらのアイデアは従来技術の延長線上にあり、十分に達成可能と考えています。ただし、研究費を獲得できるかどうかはわかりません。あとでちゃんと還元したいと思っていますので、ぜひ投資をお願いします。

研究室に参加したいと考えている学生やポスドクの皆さん。多少バックグラウンドが異なっても、勇気をもって飛び込んできてください。私自身、さまざまな所属を渡り歩いてきました。最低限の学力は必要ですが、研究室では学力とともに協調生が大切です。研究はチーム戦なのです。例え個別のテーマを抱えていても、メンバーがお互い励まし合って活動することが大切です。また、研究で一番大切なのは楽観的であるかどうかという点です。多少落ち込むこともときには必要かもしれませんが、ダメでもともとという考え方で、次から次へと挑戦することで道は拓けます。実際に、予期せぬ結果から新しい研究テーマが生み出されることが多々あります。研究室で学ぶ一番大切なことは、失敗を恐れず失敗から学ぶ姿勢かもしれません。この姿勢を習得すれば、人生怖いものはありません。

以上、研究室の成り立ちや主な研究テーマ、これからの活動方針、我々の研究室に興味をもつ学生やポスドクの皆さんへのメッセージを簡単に記しました。最後なりましたが、2013年に研究室を立ち上げてから今に至るまで、さまざまな方々に支えられて活動を続けてくることができました。この場を借りてお礼を申し上げるとともに、引き続きのご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
2023年4月10日 小島伸彦

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